移動健康・スポーツ科学館の報告

「移動健康・スポーツ科学館」(2023年7月、士別市)の報告

 雪氷ネットワークでは積雪寒冷地の住民の健康増進、体力向上のため、積雪・寒冷の自然と生活に根ざした教育活動として「移動健康・スポーツ科学館」を実施しております。  この出前方式の事業は、毎年7月に士別市社会福祉協議会が主催する「ふれあい広場」というイベントのほかに、2017年佐呂間町、2019年登別市で実施してまいりました。新型コロナが猛威を振るった2020年から3年余の間休眠状態となっておりましたが、2023年1月31日(火)、北大クラーク会館で再開、士別市では7月2日(日)、4年ぶりにこのイベントが再開されました。日帰りで活動時間3時間でしたが、「人力エネルギーの科学」というタイトルで手づくりの教材を紹介し、幼児から90歳までの市民に楽しみながら学んでもらう場を提供しました。
 エネルギー問題では再生可能エネルギーの重要性ばかり取り上げられておりますが、人力エネルギーは、震災や戦争など公助が及ばない時の被災者の救出、搬送などで最も重要なエネルギー源です。非常時でなくとも豪雪地の北海道では、ドカ雪の時の除雪など機械力が及ばない場面で、人力エネルギーの資源である体力が地域の自立を支えております。

人力エネルギーによる発電の教材

 このイベントでは、内山良朗氏もすばらしい協力者でした。内山氏は、元医療機器メーカーの技術者で運動生理学用の機器を担当された専門性を生かして手づくりで身体運動のオリジナルな科学教材を考案、制作し、住民に紹介されるという希少な方です。制作の材料費も自費、無償でこの装置を提供していただいております。今回は、写真1のように足踏み運動で人力エネルギーが電気エネルギーに変換され、地面反力のパワーと蓄積された電気エネルギー量がレベルメーターで表示される装置や、「ぶんぶんコマ廻し」という人力の運動による電磁誘導の発電エネルギーを使って100円ショップで購入したイルミネーションライトを点滅させる装置などで来場者たちに発電のしくみを紹介してくれました。


写真1 足踏み運動で発揮されるパワーとエネルギー量が
   レベルメーターで表示される装置(制作者内山良朗氏)

 今回は、このイベントにもう一人、東野裕氏(写真2)という助っ人が加わってくれました。東野裕氏は、32年前は私のゼミ生で北大の陸上部の部員、現在は関西の朝日放送テレビABCのディレクターです。東野氏は、番組の取材で訪れたのではなく、休暇をとっての北海道訪問で、たまたま私が「移動スポーツ科学館」のイベントを士別市で開催するというので、スケジュールの一日を割いて往復4時間の列車も自費、会場設営、説明役、後片付け、すべて無償のボランティアでお手伝いいただきました。


写真2
 圧電素子でLEDが点滅する教材で運動時にからだに
おこるしくみを中学生に説明する東野裕氏(左)

誰でも、いつでも、どこでも科学の面白さを

 イベントの終了近くに、知的障害の方たちのグループがやってきて、内山氏の制作した装置で運動のエネルギーでLEDのバーグラフの上下する様子が弾む心のリズムが視覚化されるかのようで、これまでの準備と苦労がいっぺんに報われる思いでした。
 人力エネルギーによる発電は、札幌の青少年科学館などでも体験できますが、「移動健康・スポーツ科学館」の装置は、安価に制作でき、ポータブルで科学的刺激に恵まれないへき地にも持参して楽しんでいただけます。床面に敷き詰められた圧電素子も、装置の配線も丸見えで操作も簡単です。科学に興味のある人なら誰でも仕掛けがわかり、自分もこのような装置を作ってみたいという意欲を引き出す利点があると思います。
 「移動健康・スポーツ科学館」は、学校の教室や地域のコミュニティセンターなどの広さで十分、参加無料、誰でも運動と健康づくりのしくみを学習できます。雪氷ネットワークの皆様におきましても、地域の町内会や学校などでご要望がありましたら下記にご連絡願います。
      連絡先: 須田 力(sudariki@poppy.ocn.ne.jp)

 最後にこの企画を実施するためにご尽力いただいた士別市スポーツ協会の皆様に厚くお礼を申し上げます。
                          NPO法人 雪氷ネットワーク  須田 力