2025年士別市「おもしろスポーツサイエンス」実施報告

須田 力(雪氷ネットワーク)

 雪氷ネットワークは教育活動として、「移動健康・スポーツ科学館」という事業を実施しております。本年も7月6日、士別市社会福祉協議会が主催する「ふれあい広場」というイベントの中で、「おもしろスポーツサイエンス」というコーナーを開設しました。3時間の活動でしたが、「人力エネルギーの科学」というタイトルで手づくりの教材を紹介し、運動体験と手作り教材の紹介、科学教材製作コーナーなどの企画で、多くの市民と楽しみ学びの機会を提供させていただきました。
 現在、エネルギー問題では再生可能エネルギーの重要性が取り上げられておりますが、人力エネルギーは、震災や戦争など公助が及ばない時の被災者の救出、搬送などで最も重要なエネルギー源です。非常時でなくとも豪雪地の北海道では、ドカ雪の時の除雪など機械力が及ばない場面で人力エネルギーの資源である体力が地域の自立を支えていることは周知の事実です。

(1)床発電による人力エネルギーの体験学習 (内山 良朗)
 写真1は、圧電素子を敷き詰めたパネルの上で足踏み運動やジャンプをすると、その出力がLEDのレベルメーターでダイナミックに表示されます。スイッチを切り替えると足踏みのエネルギーの蓄積量が表示され、運動を続けるにつれてLEDの点灯レベルが上昇していくという仕掛けです。

写真1 「床発電」圧電素子を敷き詰めた「床発電」で人力エネルギー発揮の体験

(2)手作りの人力発電キットによるエネルギーの変換の学習 (須田 力)
 写真2の左は、圧電素子を張り付けたタッチ板です。運動エネルギー→電気エネルギー→光エネルギーへのエネルギーの変換の教材です。右は、ハイタッチした二人の地図上の出身地に装着する2個のLEDです。圧電素子を貼ったPP板をタッチすると、人力エネルギーで発生した「交流」の電気によってホワイトボードに貼り付けた地図上の2人の出身地に置かれた2個のLEDが点滅し、発生した「電気の交流」が2人の間の「心の交流」として可視化されるオリジナル教材です。

写真2 「ハイタッチで心の交流」。ホワイトボード上の北海道地図の
札幌と士別の2点のLEDがハイタッチによって瞬間的に点滅する。

(3)ミニソーラーカーの組み立てと走行テスト (竹内健太郎、前田龍之介、渡辺卓真)
 今年度のエネルギーの変換の学習として、「ミニソーラーカー」のキットを組み立て、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを機械エネルギーへの変換を実体験する場が企画されました。

写真3 ミニソーラーカーの組み立てと走行テスト

 このコーナーで活躍したのが、前田龍之介君(小6)と渡邊拓真君(小5)です。二人はこのイベントのために事前にキットの組み立て法を身につけ、完成したソーラーカーが晴天の太陽光で走行することを確かめていたので、子どもたちや同伴者に工作を指導する役割を見事に果たしてくれました。これまでの「おもしろスポーツ科学館」は教える側から学ぶ側への一方向でしたが、学ぶ側が教える側に変身することによって「ふれあい広場」のキャッチフレーズである「であい」、「ふれあい」、「語りあい」の場づくりの役を果たしたのです。
 私も内山氏も80歳を越え、今回が「ふれあい広場」で士別を訪れる最後の機会となりましたが、今後の発展に大きな期待感を抱かせるひと時でした。
 最後にこの企画を実施するためにご尽力いただいた士別市社会福祉協議会、士別市スポーツ協会の皆様に厚くお礼を申し上げます。

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