米国TRB総会参加報告 浅野 基樹
2024年1月、第103回米国TRB年次総会参加の機会を得ましたので、その概要を報告いたします。
1.TRBとは
TRBとは、米国のTransportation Research Boardの略で、日本語で米国交通運輸研究会議(寒地土木研究所訳)のことです。1920年に設立されたもので、米国の科学・技術・医療の学協会(The National Academies of Science, Engineering and Medicine)における7つのプログラムのうちの一つです。
TRBの目的は、解説によると、全ての交通モードにおいて、信頼性のある、時宜を得た、公平な、エビデンスに基づいた情報の交換、研究及び助言によって改善と革新にリーダーシップを提供することされています。年間8,500人におよぶ産官学の技術者、科学者、研究者、実務者が公共の観点からその専門性により活動をしているようです。米国各州の交通局、連邦機関などや交通の発展に関心のある個人に支えられています。最も代表的な著作物はHighway Capacity Manual(日本の道路構造令に当たるもの)です。日本の学術団体に例えると、(公社)土木学会の交通部門を切り出して大きくしたような組織をイメージされると良いかもしれません。
2.委員会の例
TRBは、多くの研究グループと委員会から成り立っています。その例を挙げますと、
●政策&組織グループ(Policy and Organization Group)
・戦略的マネジメント委員会(Strategic Management Committee: AJE10)
・交通アセットマネジメント委員会(Transportation Asset Management Committee: AJE30) 他
●持続可能な交通と強靭化グループ(Transportation Sustainability and Resilience Group)
・大気質と温暖化ガス軽減委員会(Air Quality and Greenhouse Gas Mitigation Committee: AMS10)
・交通エネルギー委員会(Transportation Energy Committee: AMS30)
・災害対応・緊急避難と事業継続委員会(Disaster Response, Emergency Evacuations and Business Continuity Committee: AMR20) 他
●交通インフラグループ (Transportation Infrastructure Group)
・鋼橋委員会(Steel Bridges Committee: AKB20)
・コンクリート橋委員会(Concrete Bridges Committee: AKB30)
・耐震設計と性能委員会(Seismic Design and Performance of Bridges Committee: AKB50)
・建設マネジメント委員会(Construction Management Committee: AKC10)
・アスファルト舗装敷設と補修委員会(Asphalt Pavement Construction and Rehabilitation Committee: AKC60)
・ラウンドアバウトとその他交差点の設計・運用戦略委員会(Roundabouts and Other Intersection Design and Control Strategies Committee: AKD80)
・冬期道路管理委員会(Winter Maintenance Committee: AKR40)
・道路気象委員会(Road Weather Committee: AKR50) 他
●安全&運用グループ(Safety and Operations Group)
・交通安全マネジメント委員会(Transportation Safety Management Systems Committee: ACS10)
・交通容量・性能委員会(Highway Capacity and Quality of Service Committee: ACP40)
・車両・道路自動化委員会(Vehicle-Highway Automation Committee: ACP30)
・ITS委員会(Intelligent Transportation Systems Committee: ACP15)
・歩行者委員会(Pedestrians Committee: ACH10)
・自転車交通委員会(Bicycle Transportation Committee: ACH20) 他
他に、●公共交通グループ(Public Transportation Group)、●鉄道グループ(Rail Group)、●物流システムグループ(Freight System Group)、●航空グループ(Aviation Group)、●海運グループ(Marine Group)などがあります。
3.第103回TRB年次総会
TRB年次総会は毎年米国の首都ワシントンDCにおいて開催されます。第103回となる今回は、2024年1月7日(日)から1月11日(木)にかけて、ワシントンDCのコンベンションセンターとホテル・マリオット・マルキスで開催されました。今回の発表数は4,000以上、セッション数650、170の委員会ミーティング、200の展示、その他ワークショップという規模の大会でした。 写真1 会場のコンベンションセンター正面入り口
4.参加した委員会とセッションの概要
以下は、参加した委員会とセッションの概要です。
●冬期道路管理委員会(Winter Maintenance Committee:AKR40)
委員長(スウェーデン道路研究所(VTI)のAnna Arvidsson氏)司会のもと、下記の議事次第によって進められた。
・開会と自己紹介
・議事次第の承認
・TRBからの情報および当委員会主催セッションの紹介
・他の委員会等からの情報
・TRBからの情報
・各委員会との連携および研究コーディネーからの情報
・研究ニーズおよびイベントアイディアについて
・今後開催のコンファレンス
・フレンズおよび委員からの話題提供
・その他
最も重要な議題は今後の当委員会の研究テーマに関するRNS(Research Needs Statements)の作成でした。このRNSの内容が審査を通るとAASHTO(American Association of State Highway and Transportation Official)を構成する各州DOT(Department of Transportation)がスポンサーとなりTRBが管理するNCHRP( National Cooperative Highway Research Program)として約25万ド